ホーム > 1/4の奇跡~鎌状赤血球症の話
update 2012.12.24 English

マキノ出版から出していただいている「1/4の奇跡」という本があります。その冒頭を紹介させてください。

1/4の奇跡・・・山口拓朗(ジャーナリスト) 「1/4の奇跡」とは何か。心が震える感動のドキュメント。
特別支援養護学校教諭が語る「本当のこと」生徒たちから、「かっこちゃん」と親しみを込めて呼ばれている先生がいます。石川県の特別支援学校(旧・養護学校)に勤務する、山元加津子先生です。泣き虫で、いつもぼーっと考えごとをしていて、人間離れした失敗ばかりの山元先生。でも子供たちは、そんなかっこちゃんに魔法をかけてもらうのを楽しみにしています。山元先生は、生徒たちとの交流の中で、この世のすべてのことに、宇宙をつらぬく「本当のこと」が存在するのではないか、ということに気づきます。それを教えてくれたのは、社会から「障がいを持った」と形容されることの多い、彼らだったのです。「本当のこと」とは何か。「1/4の奇跡」とは何か。山元先生と子供たちにまつわる感動の実話を、たっぷりとご紹介します。

- その確率は、4分の1

山元加津子という名前、どこかで聞いたことがあるという人は、時代の流れに、ちょっと敏感な人かもしれません。 石川県の南西部、日本海にほど近い小さな町に、県立特別支援学校はあります。校内では、「かっこちゃん、お話して」「かっこちゃん、ちょっと来て」と、山元加津子教諭(通称かっこちゃん)を呼ぶ、生徒たちの声が途絶えません。
見た目はきゃしゃで、声が小さく、話し方もゆっくり。握力わずか7㎏。運動音痴で方向音痴、おまけに泣き虫……。そんな頼りない印象の山元先生ですが、実は、北海道から沖縄までの全国で、これまで500回にものぼる講演を精力的にこなしている、今注目の女性なのです。 人前に出ることも、話すことも苦手な「かっこちゃん」が、全国を奔走する理由。その原動力になっているのは、難病で亡くなった、一人の少女(雪絵ちゃん)と交わした約束にありました。 雪絵ちゃんは、多発性硬化症という難病を抱えていました。
ある日、「何かうれしくなるような話をして」という、入院中の雪絵ちゃんに、山元先生は、前日に見たという興味深い科学番組の話をしました。
昔、アフリカのある村で、マラリアという伝染病が猛威をふるい、村は壊滅的な打撃を受けてしまいます。しかし、どんなに伝染病がまん延しても、どんなに絶滅するほどの病死者が出ても、必ず生き残るグループがいました。
後年、そのメカニズムを調べようと、多くの研究者が、「生存者」本人から、その子孫にいたるまで、徹底的に調査を行いました。すると、一つの事実がわかったのです。
それは、マラリアが多く発生する地域では、ある一定の割合で、伝染病に強い突然変異遺伝子を持つ人(鎌状赤血球の遺伝子を持つ人)がいる、ということ。そして、伝染病に強い遺伝子を持つ人が生まれるとき、高い確率で、そのきょうだいに重い障がいを持つ人が現れる、ということ。そんなことがわかったのです。その確率は、4分の1。4人の子どもが生まれた場合、必ずそのうち1人は、成人前に亡くなってしまうような、重い障がいを持つことになります。
つまり、人間がマラリアとの生存競争に勝つには、マラリアに強い遺伝子のほかに、病気や障がいを持つ遺伝子も必要だった、ということです。病気や障がいを「引き受ける人」がいなければ、その村は絶滅していたことになります。
山元先生が、雪絵ちゃんにその話をすると、雪絵ちゃんはしばらく考え込んだ後、こう言いました。「私たちだけで、こんなにいい話を知っているのはもったいないよ。病気や障がいがとても大切だ、ということ。みんながすばらしい役割を持っていること。それが、科学的に証明されていること。すべての人が、この宇宙から必要とされていること。そんなことを、世界中の人があたりまえに知っている世の中に、かっこちゃんがしてほしい」 そんなの無理だよ、と山元先生が言おうとしたとき、それをさえぎるようにして雪絵ちゃんは嘆願しました。「何も言わないで約束して。かっこちゃん、お願い——」「その約束が、毎日、私の心を揺さぶり続けてくれるんです」と山元先生は言います。 かっこちゃんが、障がいを持つ子供たちから日々教えてもらっていること。それは、なぜ私はここに存在するんだろう、生きるってどういうことなんだろう、大好きって何なのだろう、そんな問いに対する答え(=本当のこと)なのだと言います。 ・・・・

私は雪絵ちゃんに話をしたテレビを見たときに、私たちが元気に明日へ向かって歩いて行くことができるのは、病気や障がいを持ちながら、そのために苦しみながらも毎日がんばってくださっている方がおられるおかげなのだと思いました。その方がおられなければ、今の私たちはないし、今、現在も病気や障がいを持って,そのために苦しい思いをされておられる方がいる、その方がおられるからこそ、私たちの未来の子どもたちが元気に明日へ向かって歩いて行くことができるのだと思いました。そして、そんなふうに宇宙はみんなでひとつの命を生きているのだとも思いました。

新原豊先生この1/4の奇跡の映画の中に出てくる鎌状赤血球という病気があります。映画と同じ名前のこのムック本に、鎌状赤血球症の治療と新薬の開発に20年以上取り組んでこられたUCLA大学医学部教授・新原豊さんが登場されています。文章のいくつかを抜粋させてください。

「鎌状赤血球症は、とても悲惨な病気です。発作が起こると、激しい腹痛、全身の骨の痛み、吐き気にたびたびおそわれます。その症状が進むと、脾臓の萎縮による激痛発作にみまわれ、骨の壊死や、脳梗塞や,心筋梗塞による神経症の損傷で、死にいたってしまうのです」「発作はいつ起こるかわかりません。当然、学業や仕事に支障をきたすことになります。そのため、患者は病気と闘うだけではなく、社会的に阻害され、心理的、経済的な面でも大変はご苦労をかかえてしまうのです。発作のために、仕事を続けることができず、経済的にも困窮し、心も体もぼろぼろになった多くの患者が私のもとにおとずれます」「なぜ私だけがこんな苦しい思いをするのか、周りはこの痛みを理解してくれず、私をじゃま者扱いする。私がこの世に存在している意味がわからないとなげくのです。その嘆きに触れたとき、私は、生涯をかけて、鎌状赤血球の新薬を開発しようと決心したのです」そして先生はとうとう、その新薬を開発されました。
「それは鎌状赤血球が、正常な赤血球に比べてグルタミンの消費量が高いという発見でした」「グルタミンは体のあらゆる組織や器官にとってとても重要な物質です。しかし、鎌状赤血球は、正常な赤血球に比べて、血中のグルタミンを早めに使い果たしてしまうため、酸化に弱く、細胞がダメージを受けやすいのです」
患者さんがL―グルタミンを服用したところ、赤血球の酸化が大幅に減少し,鎌形をした赤血球が正常な形に近づいたのです。20年近い研究の成果が実ったのでした。ここまでくるには、多額の研究費用や時間がかかりました。多くの補助金や支援によって、この研究が支えられたということでした。
こんなふうに、お薬が発見されたわけですが、けれども、白雪姫プロジェクトがなかなか多くの方に知っていただけていないのと同じように、鎌状赤血球症の方のことや、治療についても、社会的に遠ざけられてきた現実があり、まだまだ多くの方に知られてはいません。
私は先生と実際にお会いすることができて、親しくさせていただくうちに、いっそう自分の中に広がる思いがとめられなくなりました。知らないために、理解されなかったり、知らないために、苦しみがずっと続いているようなことがあってはならないと思うからです。
私たちが元気に明日に向かって歩いて行くことができるのは、多くの方が病気や障がいを持ちながら、がんばっていてくださるから。そして鎌状赤血球症の方の存在もまたそのひとつです。多くの方に病気のことや、治療の方法、実際のお薬を知っていただきたいと思いました。
そんなときに、新原先生の方から「白雪姫プロジェクトのために、自分ができることがないかと考えています。何かありませんか?」と温かくお声をかけてくださいました。私は、実は鎌状赤血球症のことや治療についてお伝えしたいという思いがあることをお話して、お互いにHPなどで、お知らせしあおう。みなさんに知っていただこうと意気投合したのでした。
そういう経緯があり、私はこのHPを訪れてくださったみなさんにも、鎌状赤血球症のことや治療のことをすごく知っていただきたいのです。

新原先生の御本“生命(いのち)は「与える」と強くなる”(サンマーク出版)は私の大好きな本です。
表紙の扉からじわじわともう涙がこぼれます。その言葉は「どんな人も何かを 与えることはできます。たとえそれが“ありがとう”というひと言だったとしても、それが誰かの希望となり、安らぎになるかもしれません」本を手にすることができた夜は、また倒れるように眠ってしまったけれど、朝、ものすごく早く起きて、夢中で読み、うれしくて温かく包まれるような思いのなかにいました。新原先生は、「生きるということは、愛を与えたいという対象がどんどん増えていくことなのかもしれません。自分を中傷したり、意地悪をする人たちにさえ、自分と同じ人間としての敬意をもつことができる。それが人間に与えられたいちばんの強さなのだと思います」と書いておられます。「私たちの生命には細胞レベルから、“与える”という仕組みがプログラムされている」と。宇宙は愛でいっぱいで、私たちもまたその愛にしっかりつながりながら生きる存在なのだと改めて思いました。
新原先生が最初に1/4の奇跡の話を聞かれたときに、あまりに、鎌形赤血球の患者さんの苦しみがつらいことを思って、この痛みが誰かのためにあるというような考えを簡単には受け入れられないと感じられたそうです。ところが、患者さんに1/4の奇跡の話をしたときの患者さんの笑顔に接して、人は、与えるときこそ、強くなれる。そういう、素晴らしい存在なんだと改めて感じられたそうです。

新原先生の研究においてのもうひとつの発見は、このL-グルタミンが一般の方々の身体にも優れた作用を及ぼすということです。
L-グルタミンは免疫細胞や腸、肝臓、筋肉などの働きを強める働きがあり、疲労回復や健康維持などの効果が期待できるのだそうです。

L-グルタミンを販売されている方に、どのような思いで、お仕事をされているのかうかがいました。

「世界中の人々の健康を支えたい」

そんな想いから、サプリメントとしても、開発をする運びとなり2006年、アミノピュアが産声をあげました。

LA近郊を中心として販売を始めると、効果を実感した利用者の口コミで、商品は瞬く間に広まりました。現在、アミノピュアはアメリカ国内だけでなく日本、韓国、台湾、フィリピンをはじめ世界各国に広まりを見せています。

私たちの目的は、ただアミノピュアを販売するだけではありません。多くの方々の「心と体に寄り添い」健やかな人生の伴走者として、共にあり続けることを願っています。 アミノピュア

私は、お話をうかがって、鎌状赤血球症のお薬が、ものすごく高価なお薬ではなく、サプリメントとして手にすることのできるものであることにも感動しました。また、そのグルタミンを、私たちは体の中に持っていて、実は、激しい運動のときにも体を助けるために消費されたり、免疫をあげるために使われたり、鎌状赤血球症を助けるためにも使われているものだったのだと思って、また感動しました。人間の体も、本当に、私たちを守るために、一生懸命働いてくれているんだなと人間の体ののすごさを思いました。

今までものすごい痛みの中におられた鎌状赤血球症のみなさんが、新原先生の研究で痛みがなくなって、たくさんの差別からも解き放たれていくんだと思うとすごくうれしいです。白雪姫プロジェクトでは、鎌状赤血球症のこともお伝えして治療法について広めることも応援していきたいです。 (山元加津子)