宮ぷーは奇跡じゃない、この回復を日常の医療にしてほしい。
かっこちゃんこと山元加津子さんにはじめてお会いしたのは、東京・芝での講演会でした。そのときに、宮ぷーさんの頭部CTを拝見し、その状況に絶句したことを思い出します。
にもかかわらず、宮ぷーさんが目覚しい回復を見せていることに驚愕し、”これは宮ぷーの強い意志とかっこちゃんたちの愛が引き起こした奇跡ですね”と感想を述べたら、それまでニコニコしていたかっこちゃんの顔つきがかわり、”これは奇跡なんかじゃありません。これを日常の医療のひとつにしてほしいんで
す。”と言われ、気持ちが引き締まる思いがしました。
宮ぷーとかっこちゃんが起こした奇跡、で終らせたら他人事で終ってしまう、そうではなく、常に自分に何ができるかを考え続けなければならない、と気づかされた強烈な一言でした。
宮ぷーさんの回復を当たり前の医療にするために必要なのは、患者さんへの愛情と支えあう人の絆だと思います。日本人なら出来るはずと信じています。
かっこちゃんの深い愛と気高い志によって実現したこの白雪姫プロジェクトを心から応援させていただきます。
◆2012/11/22 追記
宮ぷーとは初めてお会いしたのですが、肌つやの良さに私は驚きました。私を見るやいなやさっそく宮ぷーは一本指を動かして、“ようこそ、ながちゃん。ありがとう。おあいできてうれしいです。”とレッツチャットで歓迎の挨拶をしてくれたので、たいへん感激しました。
麻痺があってもはっきりとした意志をもっているのです。たかだか1週間前に、スノーボードの脳挫傷から回復した知人の医師と会っているだけに、”人間にはものすごい力が秘められている”、という思いが実感として私には湧き上がってきました。しかもその力を呼び覚ますのは生きる気力であり、その生きる気力を支えるのは周りの人に気持ちをわかってもらえることだと思います。
意志の疎通を図ることだけではありません。
山元かっこちゃんは、障害を持った子どもたちとのふれあいから、動かすこと、振動を与えることが運動機能の回復を助けることになると確信もしていました。そのために開発した患者さんの移動方法で懸命に自分ひとりで宮ぷーを車椅子に乗せ、車輪を押す訓練をしていました。
このような努力が回復を助けたことはまちがいないでしょう。
宮ぷーがここまで回復したのは「運がよかった」とか「若いから」である。それが私を含めた医療者の常識かもしれません。
しかし、我々はその常識を変える必要があるように思います。
人間の持つ力の限りない可能性をもっと信じてもよいのではないでしょうか。
~ 私たちは、「誰もが思いを持っていて、回復する可能性がある」ということが当たり前になっていく世界をめざします。~
この白雪姫プロジェクトの理念をここであらためて繰り返したいと思います。このような世界が実現したら、そこは、きっと優しさに溢れた社会であるに違いありません。
長堀 優(ながほり ゆたか)
プロフィール
東京都生まれ。昭和58年群馬大学医学部卒業、同年横浜市立市民病院研修医、昭和60年横浜市立大学医学部第二外科に入局する。平成5年ドイツ・ハノーファー医科大学に留学し、癌転移に関わる接着分子についての研究に従事する。平成10年より横浜市立市民病院外科医長。平成17年横浜市みなと赤十字病院外科部長、平成20年現職に就任す。
日本外科学会専門医・指導医、日本消化器外科学会専門医・指導医・消化器がん治療医認定医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医など。
いいお医者さんネット 長堀 優先生のウェブサイト
http://www.e-oishasan.net/site/nagahori/
本棚
宇宙は今日も私を愛してくれる / 山元加津子(三五館 2009.1.1)
こころと遺伝子 / 村上和雄(実業之日本社 2010.1.3)
胎内記憶 / 池川 明 (角川書店 2008.7.25)
大発見の思考法 / 山中伸弥 益川敏英 (文藝春秋2011.1.20)
宇宙は何でできているか / 村山 斉 (幻冬舎 2010.9.30)
宇宙は本当にひとつなのか / 村山 斉 (講談社 2011.7.20)
ワープする宇宙 / リサ・ランドール(NHK出版 2007.6.30)
異次元は存在する / リサ・ランドール 若田光一(NHK出版 2007.5.25)
叡知の海・宇宙 / アーヴィン・ラズロ( 日本教文社 2005.4.1)
宇宙の大道を生きる / 宮崎貞行 (東京図書出版 2011.11.15)
癒す心、治る力 / アンドルー・ワイル (角川書店1998.7.25)
思考のすごい力 / ブルース・リプトン(PHP研究所2009.2.3)
瞑想する脳科学 / 永沢 哲(講談社 2011.5.11)
シータ脳を作る / 久恒辰博(講談社 2009.4.20)
もどっておいで 私の元気! / 岡部明美(善文社 1996.6.5)
メメント・モリ 死を見つめ、今を生きる / 日野原重明 (海竜社 2009.12.9)
他力 / 五木寛之 (講談社 2000.11.7)
活学としての東洋思想 / 安岡正篤(PHP研究所 2002.2.15)
タオ自然学 / F・カプラ ( 工作舎 1979.11.15)
人生には何ひとつ無駄なものはない / 遠藤周作 鈴木秀子 (朝日新聞社 2005.6.30)