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new 2015/05/14

日本経済新聞2013年3月23日夕刊

「信じた回復 伝わる意思」

脳幹出血で倒れて「二度と回復しない」と医師に宣告された惰性が自分の意志を伝えられるまでに回復した姿を追ったドキュメンタリー映画「僕のうしろに道はできる」が23日から大阪、十三で公開された。岩崎靖子監督(37)は「意識はあっても意志を伝える可能性を閉ざされたままの人がたくさんいる。リハビリで回復することもあることを知ってほしい」と語る。

映画の主人公は石川県の元特別支援学校教諭、宮田俊也さん(46)。2009年2月、脳幹出血で倒れて危篤状態に也、医師からは「意識も回復せず、体もまひして
二度と動くようにはならない」と告げられた。宮田さんの家族が付き添えないため、同僚で親友の山元加津子さん(55)は回復を信じてリハビリのため病室に通うなか、宮田さんのわずかなまぶたの動きに気づき、意識があることを確信したという。

山元さんは特別支援学校の教諭経験から、体を動かせない子どもも視線の動きなどで意思表示できることを知っていた。そこで五十音が並んだ文字盤を宮田さんの眼前に示し、わずかに表情が動いた言葉をつないで意思を確認していった。

次第に宮田さんはリハビリ開始から半年程度で首が動くようになり、ほどなくして手の指なども動かせるようになり、言葉を読み上げる意思伝達装置を自分で操って会話を交わせるようになった。今では山元さんが押す車椅子で外出できるようになった。

岩崎監督は、宮田さんが倒れてまもなく、友人の山元さんから「絶対治る」と電話をもらった。「何かとても大切なことが起きている」と感じて撮影を続け、約三年半の記録をドキュメンタリーにまとめた。

20日に大阪市中央公会堂(同市北区)で開かれた上映イベントには約1000人が集い「植物状態」とされる患者と家族らも鑑賞、上映後の会場は温かな拍手に包まれた。

「植物状態」といわれる患者数の正確なデータはないとされ、推定五万人とみる専門家もいる。

「回復困難と思われても絶望しないで。回復する道はある」と講演。「顔を近づけて話しかけたり、緊張する筋肉をほぐして指を動かしたりするなど地道はリハビリを繰り返すことが大切」という。障がいを負いながら件名に生きる人々の姿をとらえた映画を配給しているNPO法人「ハートオブミラクル」(兵庫県伊丹市)の副代表理事、三浦喜美子さん(48)は「映画が多くの患者にとって、奇跡が奇跡でなくなる日に向かう第一歩になれば」と期待している。

映画は大阪市淀川区の淀川文化創造館「シアターセブン」で23日から4月19日まで公開。山元さんらの活動の様子は「白雪姫プロジェクト」としてホームページsihirayukihime-project.netにまとめられている。

(2013年3月23日日本経済新聞)