福田内科クリニック副院長 福田克彦先生
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医療従事者のだれもが信じていないことが問題

医療者や治療家の方こそ治ることを確信して、当事者や付き添う家族を先導していくぐらいの信念を持ち続けることがいちばん大切

在宅での廃用萎縮は寝たきり老人ばかりの問題ではありません。
若年や壮年期においても、ひきこもりや鬱状態、骨折、脳卒中の後遺症、脊髄損傷、肥満や呼吸循環器疾患などを契機に、筋骨格が萎縮していき二次的に、自力でねがえりがうてない、起き上がれない廃用症候群になります。
廃用症候群の問題点は、入院・入所中の病院や老人施設はおろか、特に急性期の疾患治療やリハビリテーションを終えて在宅で過ごす方においては、見過ごされておこなわれていないのが現状です。
維持期や生活期・末期癌などの終末期においては、カウンセリングやリハビリテーションが、とりわけ在宅においておこなわれることは殆どありません。日本の医療保険や介護保険制度は、時間や期間をかけて在宅リハビリをおこなうための療法士のマンパワーや、それを行う治療家や医師に対するインセンティブやドクターフィー制度が整っておりません。
つまり無報酬に近く収益性の低く、効果が予測出来ない往診でのカウンセリングやリハビリには、精神科医や整形外科医も療法士もまず行こうとしませんし、なおさら柔術整体師などは、医療者側からの、施術事故に対する告発を恐れるあまり思い切って手が出せないわけです。
そもそも、何ヶ月も寝たきりになっている廃用症候群の患者が回復して社会復帰できるとは、ご家族はおろか医療従事者のだれもが信じていないことが問題です。
しかし医療介護制度が今後整い往診医療のチーム体制が充足しても、それぞれのリハビリ師の分業に任せっきりでは、それぞれが自分の責任範囲で時間内にバラバラに作業をするだけで、回復が進まないでしょう。
私はリハビリテーションを専門に学んだ医師ではありませんし廃用症候群の専門家でもありません(自ら廃用萎縮のリハビリを実践している専門家って日本にいるのでしょうか?)が、体重が60kgから28kg(158cm)まで体重が落ちて首もすわらなくなった神経性食思不振症の女性や、呼吸不全や腰椎圧迫骨折などで廃用症候群になられた男性を独自のリハビリで社会復帰させた経験はありますし、今でも家庭医として希望を燃やしながら試行錯誤しているのが現状です。
診断病名や医師の予後宣告を鵜呑みにして障害が固定されたり死に逝く病であると勝手に思い込まずに、むしろ医療者や治療家の方こそ治ることを確信して、当事者や付き添う家族を先導していくぐらいの信念を持ち続けることがいちばん大切だと思います。

福田克彦

プロフィール

福田内科クリニック 福田克彦(ふくだ かつひこ)
出身校: 鳥取大学大学院 医学部
福田内科クリニック 副院長
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